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観光客数の単位

[カテゴリ: 観光地マーケティング » 目標設定編] エントリー: 2009-06-19

観光客数の単位

現在、観光庁が中心となって、都道府県の観光統計の取り方を標準化しようとしています。

しかし、今までも、各都道府県および自治体では、観光客数○○人といった発表をしてきています。どうして、それではいけないのでしょうか。

その理由は、「現在の発表されている観光客数では、相互比較や加算したりすることができないこと」にあります。

戦略や計画を実行していくためには、その目標値として「測定できる定量的な事象」が設定されますが、現在の観光客数では、そうした要件を満たすことができないのです。これは、今日のように、観光立国を目指した取り組みを行っている中では、とても大きな問題です。

では、なぜ、満たすことができないのでしょうか。理由は大きく2つ挙げられます。

観光客数の測定方法がそれぞれ大きく異なっていること観光客数の単位がきちんと整理されていないこと

1は、技術的な問題です。有料施設ならともかく、無料の施設、例えば、海水浴場に何人くらいの人が来ているのか、ということは、なかなか、測定することが困難です。その誤差の幅が、地域や施設によって大きく異なりすぎると、そもそもの数値の信頼性が失われてしまいます。

ただ、どうしても誤差は生じるので、ここは「決め」の問題でもあります。

より深刻なのは、「2」の問題です。実は、現在発表されている観光客数は、地域によってその単位が異なるだけでなく、地域の内部でも違う単位のものが加減算されるなどして、数値としての意味を喪失している場合が少なくないのです。

本コラムでは、その「単位」について、整理をしていってみましょう。

例題

「山田さんが、夏休みに、家族4人で、三重県にでかけ、伊勢神宮や、鈴鹿サーキット、そして、鳥羽水族館に立ち寄り、志摩にあるホテルに一泊しました。さらに、秋にも再び家族4人で来訪し、長島スパーランドに立ち寄り、日帰りしました。」

さて、こうした観光行動が行われた場合、地域(この場合、三重県)では、観光客数をどのように数えるのでしょうか。

ここから整理できる人数単位は5つあります。

4人4人×2回=8人回4人×1泊=4人泊4人×2日+4人×1日=12人日4人×3地点+4人×1地点=13人地点

まず、実際に三重県を訪れている「人」は、山田さんの家族4人ですので、実人数として「4人」という単位が出てきます。

さらに、この4人が、2回、来訪したわけですから、4人×2回で8人回。4人は一泊ですから4人泊。泊ではなく日で考えれば、延べ3日間いたわけですから、4人×3日で12人日。そして、夏休みには3つの観光施設(観光地点)に立ち寄り、秋には1つの観光施設(観光地点)に立ち寄ったのですから、4人×3地点+4人×1地点で、13人地点となります。

このように、一家族の観光行動でもさまざまな見方ができるわけです。そして、どういった単位で見るかによって、数値が大きく変わっていることが解るでしょう。

ここで問題になるのは、こうした「単位」を意識せずに、観光客数を計算してしまっているケースが少なくないのです。

例えば、人地点を「日帰り客」人泊を「宿泊客」というように設定し、両者を加算することで「地域の観光客数」として発表している地域もあります。前述した例を考えれば、これは、無意味な加算であることがわかると思います。

また、人地点というのは、その単位の性質上、対象とする観光施設(観光地点)を増やしていけば、人数が増加します。あるリゾート地で、厳しい社会経済環境の中、観光客数が増加していると思ったら、実は、個人経営の博物館といった小規模な観光施設が立ち上がっていてそれを調査対象に毎年、加えていったことが、増加の理由であり、実際の人数(人泊や、人回)はむしろ減少していたということもありました。こうしたケースでは、本来、正しい意思決定の材料となる統計が、逆にミスリードすることにもなります。

地域において、観光客数を取り扱うときには、それが、どのような単位によるものなのか、どのように取得されたものなのかを意識することが重要です。

なお、これら単位のうち、現在、人泊については、観光庁がすでに全国統一基準で展開済みです。経済的に最もインパクトの高い「人泊」が、整理されたことはとても有意義なことといえましょう。

また、前述したように、他の単位についても2010年度をめどに整理がなされる見込みとなっています。これによって、「単位」についての混乱はなくなるものと期待されます。ただ、それは、ようやく「単位がそろう」ということを意味しているのに過ぎません。

前述の人地点のように、我々が、間違った「単位」を意思決定に使ってしまえば、やはり、統計の意義は喪失されてしまいます。

今後は、単位がそろってくることを前提に、その単位を用途に合わせて使い分けていくことが求められることになります。

posted by admin@jtbf

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